ジョーの適当な地図でもあっさり道場まで辿り着くことが出来たのは、相田先輩が既に何度か彼をストーカーしていたせいなのは今さら説明するまでもない。
「たーのーもー!!」
再び相田先輩の傍若無人な雄叫びが、住宅街の中にある道場の前で空しくこだまする。
「…失礼な道場だな」
先輩がため息をつきながら、堂々と道場の中に入っていき、その後ろを僕ら3人が静かに続いた。
60畳以上あるだだっ広い道場には、まだ誰もいなかった。
木製のフローリングが床を敷き詰め、壁には門下生の名前がずらりと並んでいる。正面の床の間には、中国の山々が描かれた水墨画が掛けられ、その上に『一撃必殺』という日常生活ではまず使わない危険な文字が額に入れて飾ってあった。
「たのもー!」
今度は場内から先輩が叫ぶと、奥の扉が開き、空手着を身に付けた利一君が怪訝そうな顔をして出てきた。
「一体なんの御用でしょう?」
丁寧な口調で利一君が聞くと、相田先輩は高らかに笑い出し
「あいや、小次郎、敗れたり!」
と、彼を指差した。
小次郎がいないことは、みんな百も承知だ。
「空手とカンフーが別物と言っておきながら貴様が着ているのは、空手着ではないか。本当に拳法を愛しているのならば、俺のように
カンフー着を着こなすか、トラックスーツを着るがいい! ていうか、着ろ!」
そう言い放つ先輩はカンフー着で、宮本武蔵だ。
先輩の長台詞に呆然としながらも、冷静な利一君は
「あー、確かウチの学校の先輩でしたよね。相田先輩でしたっけ? ご用件はそれだけでしたら、もう帰ってもらっていいですか?」
と、言い放った。
昼休みはいつもあんなことをしているくせに、意外とまともな神経を持ち合わせている。
「ええぇい。黙れ、黙れ! 私は貴様のかわいそうな環境に、手助けをしてやろうと来てやったのに。なんだ、その態度は!」
どう見ても先輩のほうがかわいそうな人だし、態度も悪い。
「たーのーもー!!」
再び相田先輩の傍若無人な雄叫びが、住宅街の中にある道場の前で空しくこだまする。
「…失礼な道場だな」
先輩がため息をつきながら、堂々と道場の中に入っていき、その後ろを僕ら3人が静かに続いた。
60畳以上あるだだっ広い道場には、まだ誰もいなかった。
木製のフローリングが床を敷き詰め、壁には門下生の名前がずらりと並んでいる。正面の床の間には、中国の山々が描かれた水墨画が掛けられ、その上に『一撃必殺』という日常生活ではまず使わない危険な文字が額に入れて飾ってあった。
「たのもー!」
今度は場内から先輩が叫ぶと、奥の扉が開き、空手着を身に付けた利一君が怪訝そうな顔をして出てきた。
「一体なんの御用でしょう?」
丁寧な口調で利一君が聞くと、相田先輩は高らかに笑い出し
「あいや、小次郎、敗れたり!」
と、彼を指差した。
小次郎がいないことは、みんな百も承知だ。
「空手とカンフーが別物と言っておきながら貴様が着ているのは、空手着ではないか。本当に拳法を愛しているのならば、俺のように
カンフー着を着こなすか、トラックスーツを着るがいい! ていうか、着ろ!」
そう言い放つ先輩はカンフー着で、宮本武蔵だ。
先輩の長台詞に呆然としながらも、冷静な利一君は
「あー、確かウチの学校の先輩でしたよね。相田先輩でしたっけ? ご用件はそれだけでしたら、もう帰ってもらっていいですか?」
と、言い放った。
昼休みはいつもあんなことをしているくせに、意外とまともな神経を持ち合わせている。
「ええぇい。黙れ、黙れ! 私は貴様のかわいそうな環境に、手助けをしてやろうと来てやったのに。なんだ、その態度は!」
どう見ても先輩のほうがかわいそうな人だし、態度も悪い。


