洸河は洸河でピンポイントだったらしく、感動に満ち溢れているみたいだ。
「失礼ながら僕も相田先輩のことを誤解していたみたいです。こんないい人だったなんて出会えて嬉しいです!」
 いや、それは誤解じゃないですよ。
 間違ってないですよ、洸河先輩。
 だんだん彼のほうが気の毒になってきた。
「いやいや、それは大変嬉しいのだが、これを言い始めたのは他でもない、そこにいるエイト君なんだよ」
(えっ?)
 急に話を振られて驚いている僕に洸河先輩が近づいてきて
「そうだったのか、君が…。いやすまなかった。礼儀知らずな若者だと思っていたけど、こんな熱意のある後輩だったなんて」
と、相田先輩のとき同様、ブンブンと両手をつかみ上下に振り回した。
「いや、そんな僕は…」
 予想外の展開になんと言っていいのか困った僕は言葉が出ない。
 ひとしきり僕と熱すぎる握手を交わした洸河先輩は、あくまでもキザに相田先輩と遠藤さんのほうにクルリと振り返り、夕陽を背にして高らかに宣言した。
「入らせていただきましょう! あなたたちの劇団演劇部に!」
 洸河先輩の白い歯がキラリと光り、僕らはついに一人目の仲間を引き入れることに成功したのだった。