このリストは生徒会が弱小部を廃部に追い込むために何度か作り変えたもので、手元にあるのは昨日出来上がったばかりの最新版だ。僕や遠藤さんのように入ったばかりで放り出された一年生の名前も何人か載っている。
 一年生は入学したばかりだから部に愛着のある人間も少ない。生徒会に上級生ほど恨みがなくっても他の部活に鞍替えすることはそんなに難しいことじゃないだろうというのが僕らの読みだった。
 それにしても、何故こんなリストを相田先輩が持っていたのだろうか。
 生徒会が弱小部を潰すために作ったリストを、生徒会に一泡ふかすために使おうとしている僕らにすんなり渡すはずがない。ましてや相田先輩が國井会長とまともなコンタクトと取り合うとは到底思えない。
 これ以上考えるとどうにも嫌な想像しか出て来なさそうなので、僕は意識をこれからすることに集中させた。
 同じ学校の生徒とはいえ知らない人に声をかけるのは緊張する。まずはなんとなく僕らの一年C組から近い教室を狙うことにし、A組で天文部だった坂上恵子さんのところへ向かった。
 教室から出てきたA組の人に遠藤さんが声をかけて呼び出してもらうと、坂上さんは全く知らない僕らに警戒しながら、廊下に出てきた。
「すいません。私、演劇部の遠藤というものなんですけど」
 はぁ、と返事をする大人しい感じの坂上さんは遠藤さんの力説に曖昧な相槌を所々入れながらも、最後まで話を聞いてくれた。
「そうなんですか。でも、私はそういうのに興味ないんで…」
 予想通りのやや引き気味な反応に僕は後ろでため息をつくも、遠藤さんは食い下がって説得を続けている。
「ホント、いいんで」
と最後は逃げるように坂上さんは教室の中へ戻っていった。
「何だったの?」
 A組の教室の中から戻ってきた坂上さんに事情を聞く友達の会話が聞こえてくる。
坂上さんが小さい声で何か話すと、大きな笑い声がして、なにそれ?などと演劇と僕らのことを見下すように言っていた。