クラスメイトの冷ややかな視線を一心に浴びると思いきや、教室中から大爆笑の渦が巻き起こった。
「もう、早く席に着きなさい!」
 山崎先生は顔を真っ赤にしながらそう言って、僕は何が起こったのかよくわからないまま席に着いた。
(そんなに面白いか、今の?)
 腑に落ちないけど、とにかく助かった。赤い髪の先輩には感謝しなくてはいけない。
「なぁ、今日初めて学校に来たんだろ?」
 ホッとしつつも頭を悩ます僕に、前の席に座る男子生徒が話しかけてきた。
「そうだけど…」
「なんで知ってんの、あのこと?」
(あのこと?)
 小島というクラスメイト曰く、ちょっとした事件があったらしい。
 二日前の放課後、サッカー部顧問の体育教師が放送室から部員の呼び出しをしていた。
そこに放送委員会の顧問でもある山崎先生が入ってきて、マイクスイッチを切ったつもりでいた体育教師は、あの言葉を全校に流してしまったらしい。
(なるほど。それで僕がサッカー部と言ったときに、先生は変な動揺をしていたのか)
全てが繋がってすっきりした僕は、ついでにあの先輩のことも聞いてみた。
「ああ、あの演劇部の。もう見たんだ」
 第1印象が部活動というのもおかしな話だが、これで先生が僕に部活を聞いてきた意味も理解できた。あれは話を逸らしたのではなく、先生の頭の中は繋がっていることだったのだ。
「うちの学校の名物生徒らしいけど、あれはないよ」
 『有名人』ではなく、『名物』というところに卑下した意味が含まれていることは明らかだった。それから小島君は相田先輩の悪口から演劇部のイメージについて語り始めた。大体さ俺の中学の演劇部もオタくさい系女子の巣窟みたいなところでよ、暗い部室の中でなんかブツブツやっててさ。文化祭とかでヒラヒラのドレスかなんか着て叫んでんだよ。ナニ言ってるのかわかんねぇっていうか、いつもはクラスの誰ともしゃべんねぇし、休み時間とかも隅っこで本とか読んでるやつがさ、いきなり体育館のステージで目ぇキラキラさせてると怖いよな。その前に、お前ら痩せろよって感じでさ。
 さすがに言いすぎだとも思うけど、小島君の言おうとしていることはよくわかる。
僕の中学校でも演劇部という存在は似たようなものだった。テレビに出てくる俳優とは全く違う自分の世界に入りまくりの妄想集団って感じだ。