演っとけ! 劇団演劇部

 ジンジンと手から広がる痛みを抑えつつ
「生徒会だからって部員になんの報告もなく部室の鍵を勝手に変えていいんですか!」
「それなら1時間目の休み時間に相田君に報告済みだ。そうだったね、石本君」
「はい。しっかりと伝えました」
「だ、そうだ」
とお得意の眼鏡を持ち上げるしぐさをして、から揚げをひょいと口にくわえた。
「部室に私物が置いてあるならいつでも来てください。一時的に貸し出すことはできますので」
 窪田副会長が笑顔でそう告げられると、僕から言える事はもう何もなかった。
 とぼとぼと生徒会室を後にした僕らは、そのまま階段を上がり屋上に出た。
 昨日の豪雨が夜のうちに止んでくれたおかげで、なんとか座ることのできるベンチを見つけ並んで座る。
 昼休みの屋上に可愛い女の子と二人、ベンチでランチなんて夢のようなシュチュエーションのはずだけど、浮かれる気分になれるはずもない。それでも僕はさっきの遠藤さんを見習ってなるべく明るく振舞った。
「今日は人が多いね」
「校庭がグチャグチャだからかなぁ」
「座れてよかったね」
「ウソみたいに晴れてるね」
 僕の言葉をうん、そうだねだけで遠藤さんは受け流していく。憧れのシュチュエーションどころか、はたから見れば別れる手前のカップルだろう。
お互いに別れを意識する二人。別れたがっているのは女のほうだ。男は彼女から別れ話を切り出されないように必死で会話を繋げようとする。だけど彼女は薄い返事をするばかり。気がつけば出会った頃からの思い出を語り始める男。いつの間にか会話を続けることが目的になり、それが別れ話のプロローグに一役買っていることに気づきもしない。女はそれにもただ黙ってうなづくばかり。やがてそれも語り終わると、男は次の言葉を捜そうとするも言葉が出ない。しばらくの沈黙のあと、彼女はそっと涙を流し
「ごめんね」
と呟くように言った。