「なんだ、君たちか」
僕たちがここに来た用件をすぐに察したのだろう。國井生徒会長はため息混じりに僕たちを出迎えた。
「先ほどの件ならもう解決したはずだが、他に用でも?」
國井生徒会長を合わせた4人のいる生徒会室は演劇部の部室とかなり似ていた。広さも中央にスペースを取っている長机も壁際を占領している棚も殆ど同じだった。同じ学校の施設なのだから当たり前なのかもしれないけど、印象が大分違うのは演劇部よりも綺麗に整頓されていることと、奥にふんぞり返っている男のせいだろう。他の3人は僕たちのほうを見向きもせず、ノートパソコンを開いて何やらずっと打ち込んでいる。
「他に用はありません。もう一度演劇部の廃部を考え直してはもらえませんか?」
僕は緊張で裏返らないよう慎重にゆっくりと声を出した。
んーっ、と少し考えるような仕草を見せた國井生徒会長は机に両肘をついて真剣な面持ちで
「そんなに演劇がやりたいのかい?」
と尋ねてきた。
僕は遠藤さんと顔を合わせて二人同時に
「はい!」
と力強く返事をした。
「なるほど。そうか…そんなにか」
國井生徒会長は静かに立ち上がり、窓を叩きつける大雨を眺めた。悩んでいるように見える生徒会長を背に、同じ印象を受けた遠藤さんと目があって僕は小さく頷いた。
「僕たちどうしても演劇がしたいんです!」
もう一度念を押すように僕が言うと、生徒会長はゆっくりと振り返り
「よし、わかった」
と頷いた。
遠藤さんと喜びを分かち合おうとすると、國井生徒会長は眼鏡を中指で持ち上げ言葉を続けた。
「君たちには知り合いのプロダクションを紹介しよう。そこでレッスンを受けていればそのうち大きな舞台にあげてもらえるかもしれない」
この男が演劇部の廃部を見逃す気がないことはよくわかった。なんて奴だ。プロダクション? 大きな舞台? 遠藤さんと?…いいかもしれない。
遠藤さんと二人、大舞台のスポットライトを浴びながら今まさにキスシーンを繰り広げようとしているところを想像した僕は顔がにやけそうになったが
「ふざけないでください。私たちは、学校で演劇がしたいんです!」
という遠藤さんの声で我に返り
「そうだ! 学校でやることに意味があるんです!」
と口元がつりあがるのを押えながら、あとに続いた。
僕たちがここに来た用件をすぐに察したのだろう。國井生徒会長はため息混じりに僕たちを出迎えた。
「先ほどの件ならもう解決したはずだが、他に用でも?」
國井生徒会長を合わせた4人のいる生徒会室は演劇部の部室とかなり似ていた。広さも中央にスペースを取っている長机も壁際を占領している棚も殆ど同じだった。同じ学校の施設なのだから当たり前なのかもしれないけど、印象が大分違うのは演劇部よりも綺麗に整頓されていることと、奥にふんぞり返っている男のせいだろう。他の3人は僕たちのほうを見向きもせず、ノートパソコンを開いて何やらずっと打ち込んでいる。
「他に用はありません。もう一度演劇部の廃部を考え直してはもらえませんか?」
僕は緊張で裏返らないよう慎重にゆっくりと声を出した。
んーっ、と少し考えるような仕草を見せた國井生徒会長は机に両肘をついて真剣な面持ちで
「そんなに演劇がやりたいのかい?」
と尋ねてきた。
僕は遠藤さんと顔を合わせて二人同時に
「はい!」
と力強く返事をした。
「なるほど。そうか…そんなにか」
國井生徒会長は静かに立ち上がり、窓を叩きつける大雨を眺めた。悩んでいるように見える生徒会長を背に、同じ印象を受けた遠藤さんと目があって僕は小さく頷いた。
「僕たちどうしても演劇がしたいんです!」
もう一度念を押すように僕が言うと、生徒会長はゆっくりと振り返り
「よし、わかった」
と頷いた。
遠藤さんと喜びを分かち合おうとすると、國井生徒会長は眼鏡を中指で持ち上げ言葉を続けた。
「君たちには知り合いのプロダクションを紹介しよう。そこでレッスンを受けていればそのうち大きな舞台にあげてもらえるかもしれない」
この男が演劇部の廃部を見逃す気がないことはよくわかった。なんて奴だ。プロダクション? 大きな舞台? 遠藤さんと?…いいかもしれない。
遠藤さんと二人、大舞台のスポットライトを浴びながら今まさにキスシーンを繰り広げようとしているところを想像した僕は顔がにやけそうになったが
「ふざけないでください。私たちは、学校で演劇がしたいんです!」
という遠藤さんの声で我に返り
「そうだ! 学校でやることに意味があるんです!」
と口元がつりあがるのを押えながら、あとに続いた。


