(あれ?)
 先輩のポリシーは全ての女の子に適用するということだろうか。
それは、つまり、もしかして。
「あのさ、遠藤さんって相田先輩と付き合ってるんじゃないの?」
 僕が横にいる遠藤さんに小声で聞くと
「えっ、そんなわけないって」
と彼女は笑って答えた。
「でも、この前は下の名前で呼ばれたことが親と女子しかいないって…」
「だって、相田先輩は、男って感じもしないでしょ?」
 その瞬間、地中深くに埋まっていた僕の魂は熱いマグマとともに地上へ飛び出し、暗黒の雨雲を突き破って太陽が顔を出すと、コールドゲームのはずだった試合の再開を知らせるサイレンが鳴り響いた。
「ちょっと待った!」
 僕は颯爽と飛び出し、相田先輩と遠藤さんの前で高らかに声を張り上げた。
(んっ?)
 生徒会の人がいない。
「あいつらなら、もう帰ったよ」
 相田先輩が鼻をほじりながら、だるそうに教えてくれた。
 遠くで春雷の落ちる音がする。
 それは僕の出番と演劇部の終わりを示しているようだった。