「しょうがなくない!」
 まだ余力が残っていたのか、怒りが戻ってきたのか國井会長がまた叫ぶと、窪田副会長は落ち着くように手を差し伸べて、それから小さな声で耳打ちした。すると会長は急に冷静さを取り戻し、ニヤリと笑った。
「まぁ、いい。とにかく昼休みに来なかったのだから仕方がない。約束通り演劇部は本日を持って廃部だ」
「えっ!」
 遠藤さんが驚きの声を上げた。
「廃部って、どういうことですか?」
「どうもこうもそのままの意味だよ。だから私は親切に他の部に入りなさいと言ったんだ」
 問い詰める遠藤さんに、落ち着きを取り戻した國井会長は余裕の笑みで答えた。
「もともと生徒会規約は『文化部の場合、五人以上の部員がいないときには廃部』ということになっている。去年も四人しかいなかったが見逃してやったんだ。これ以上、同情の余地はない」
「そんな…」
 遠藤さんが肩を落とす。
「それは生徒会の横暴だ!」
今までやる気のなさそうだった相田先輩が突然反論を繰り出すと、すかさず生徒会長が
「だから新入生が入ってから十日間は待ってやっただろ! わざわざ最終日に通達までしたのに忘れるな!」
と今まで一番の大声で叫び、部室の中に沈黙が訪れた。
 土砂降りの雨音が部室の中で響き渡る。そして、しばらくしてから相田先輩の重い口が開いた。
「…わかった。今日を持って演劇部を解散する」
 先輩の悔しそうな表情を見て、國井会長は
「そうか、やっとわかってくれたか!」
と不謹慎なほど大喜びした。
「明日からは、『舞台芸術部』として」
「ダメに決まってるだろ!」
 相田先輩のボケを素早く潰す会長。
「絵梨ちゃん、いいでしょ?」
 負けじと國井会長を押しのけて、後ろの窪田副会長におねだりをしようとする先輩。
「ダメです。それにその下の名前で呼ぶのやめてもらえませんか」
「女の子を名前で呼ぶのは、俺のポリシーだから変えられないないなぁ」