ジョーがレシーブをミスして球が逸れる。
 このままだと御手洗君のトスでもフォーロ仕切れないだろう。
 桜井さんの前までボールが届かない。
 バシッ!!
 コートの端に上がったボールを僕が見よう見まねでアタックすると、あっさりと点が決まった。
「やるじゃん、エイト君!」
「ナイスフォロー!」
 みんなが集まってくる。
 ついに、ついに来たのだ。
 僕の出番が!
 佐々木栄斗、覚醒の瞬間である。
「ゲームセット。勝利、CCチーム」
と同時に試合が終わった。
 もう少し僕の見せ場があってもいい気がしませんか。
 それとも、それは決勝まで取っておけということだろうか。
 今井たちのほうを見ると、こちらの試合終了に気付いたのか、おしゃべりを止めて立ち上がろうとしていた。
 目が合った今井は、見下した笑みを浮かべてその場を離れていく。
(その自信満々の鼻をへし折ってやる)
 5分間の休憩中、あまり僕らは静かに試合が始まるのを待った。
 みんな少しでも体力を回復させようとしているのだ。
 こういうときに限って現れそうな相田先輩は気味が悪いほどに出てこない。有難いのだけど、少しガッカリしている自分もいる。
 勝てる見込みが少ない分、やっぱり空気も重い。こういう空気を清浄はしないもののかき回してくれる先輩は、それはそれで貴重なのだ。
「A組のBチーム、D組のDチームは校舎側のコートへ。B組のBチーム、C組のCチームはステージ側のコートに集合」
 体育教師のゴリラーマンが笛を吹く。
 桜井さんが大きく息を吸い込んで気合を入れた。
「行くよっ!」
「おうっ!!」
 僕らはいっせいに立ち上がり、最後の戦いに向かった。
「それでは、B組のBチーム対C組のCチームで決勝戦を行う。この試合に限り時間制限なしだ。思い切って試合に臨むように」
 既にB組もC組も原型を留めていないのだが、今さら誰も突っ込まない。