夕陽に染まったリビングで、二人は対峙していた。

『もう一度…言ってくれる?』

琉雨は男の背中に呼びかける。

だが男は窓外を見つめるばかりで、彼の声には答えない。

『どういうことなんだよ』

琉雨は自分の声が上ずりそうになるのを感じた。

『兄さんを守るんじゃなかったの?』

「琉雨」

男が開口した。冷たい声音である。

「いま行った通りだ。遥斗は久遠家のモノをなった。

もう、矢神 遥斗は存在しないのだよ」

『…ふざけるなよ』