雄星中1の時side


俺は、いつも兄と比べられた。


綾星。


優秀だった。


優しかった。


……完璧だった。



俺は、クラスの落ちこぼれ。



でも、親はなにも言わなかった。



俺のことなんて、みてなかった。



優秀な息子がもう1人いるから。



俺は、要らない子だった。



そんなとき、兄貴が癌になった。



もう、手遅れだった。


死んだ。


優しい瞳をこちらに向けて、



親がいない時間を見計らって言った。



ごめんなぁ。
俺がいなくなったら、雄星に迷惑かけちゃうな。
俺も、自由に生きたかった。
でも、無理だった。
雄星には、自分の好きなように、生きてほしい。
ずっと見守ってるからな。
父さんと、母さんなんかの、言いなりになんてならなくていい。
雄星は、雄星らしく生きろ!

それが、兄貴と俺の最後の、本当の二人だけの秘密の会話となった。


涙が止まらなかった。


俺のせいで、兄貴は、死ぬ間際まで苦しんだ。


俺のせいで、ずっと我慢させていた。


初めて、知った。


それから三日後兄貴は死んだ。


俺は、とうとう、本当に要らない子になった。


そして荒れた。


喧嘩しても、喧嘩しても、自分の存在価値がわからなかった。


どんなにみんなから慕われても、自分の居場所が、わからなかった。


そんなときだ。


零蝶にあったのは。


真っ暗な公園で、自分の真っ赤な拳を見つめていると、後ろから足音が聞こえた。


「1人で苦しんだって、何の解決にもならないだろ?」



真っ黒な瞳をした女の子だった。


「お前に、なにがわかる?

いつも比べられて、挙げ句、味方もいなくなって、もう取り返しのつかない、罪をおかして、捨てられて。もう俺はボロボロなんだよ。」



そうすると女はふっと笑った。


「それくらいのことにお前の人生左右されてどうすんだよ?」


予想外だった。


みんな俺に同情した。


なにも知らないくせに。


だけど。


その女は違った。



零蝶か…

また会えるかな………