振り返って、トリノに向き直ると、ガッカリした様に肩を落としていた。


「やる前から諦めたくありません。お願いします先生……いや、トリノ様」


「トエトから推薦状を貰ったのなら、私の許しは要らないだろう?」


「いいえ、トリノ様の許しも貰わなくては行けません。先生...どうかお願いします」


「トリノ...........この子達は、私達夫婦の希望ですよ」


「ソル…あの御守りは肌に離さず持っているのですよ?」


「はい!もちろんここに」


取り出したソルの胸元から、御守りの首飾りがキラリと光った。

二人の眼差しを受けて、トリノは漸く観念した様に深く息を吸うと、両腕を天に向かって大きくひろげ、よく通る声で言い放った。


「レルーガ神よ!!か弱き大地の子を闇より守り、いつの日か此の手に戻したまえ!!」


グッと込み上げるものを我慢して、深く丁寧に二人にお辞儀をする。


「行って参りますっ!!」


二人に背を向けると、勢い良く走り出した。

風の様に速く、速く、何処までも飛んで行ける様な気がする。

もう振り返りはしない!!


「16才で年頃だとゆうのに……同じ道を進むとは...........」


「6年前から分かってた事でしょ?あの子は自分で決めて、ここを旅立ったのだから...........それにね?あの清い風は一所に留めておく事は出来ないものでしょ?」


「神殿から逃げ出した私達には、あの子を止める資格は無いな……」


トリノは腕に添えられた手を上から包み込む様に握って呟いた。


「行っておいで、私の愛しい子よ……」


その瞬間、熱い熱風が一陣吹き抜けた。