「それではどうしてそんなに頑なになさるので?」


「.......私は、男女のそういった事には疎くて、......それよりも神官になる事の方が私にはとても大事なんです。......ここで預言書の解読を承諾したのも、成功すれば神官への道も開けるかと思ったからで......」


「確かに神へお仕えする事はとても尊い事で御座います。ですがソル様、ガロン(平民)出の女子の身でありながら上位の神官を目指すからには、デルガ(貴族)出身のご子息様とは違う望みがおありでしょう。何か大志を抱いておられるのではないですか?」


「.......必ず叶えると誓った親友との約束があります。.......今の私には何の力も無いから.......」


「.......そうでしたか。少しの間しかお仕えしておりませんが、ソル様が必死に解読作業に取り組むお姿をずっと見ておりました。真剣なお気持ちも分かります。ですのでソル様、道は一つとは限らぬと思います。」


「一つとは限らない?」


「はい。ソル様には、神官とは別のもう一つの道が今開けて来ています。それがキルバル様です。あの御方をお助けすれば、ソル様のお望みに近づく事が出来ましょう。キルバル様は他でもないソル様を必要とされています。どうかもう一つの道にも目を向けて頂けないでしょうか?私は幼少の頃からキルバル様を存じております。あの御方は誰よりもお優しく、強く、この国を変える力をお持ちの御方です。私はそう信じております。ですからソル様もどうか.......」


「ステーシア.......」


彼女の瞳には薄らと涙が浮かんでいた。