額に冷たい感触を受けて、少しづつ意識が浮上する。

瞼がゆっくりと開き、ぼやけた視界が定まると、そこは見慣れた天井だった。


「...........あぁ...........なんだ...夢か...........よかった...........」


「やっと目が覚めたわね」


声の主に視線を動かすと、トエト先生がいた。

奥の方の椅子にはトリノ先生も座って居る。


「アレ?トリノ先生も居る...........ソルダン(学校)はいいんですか?」


「今日は、それ所じゃないですから子供達は帰しました.........それよりも、ソル...大丈夫ですか?」


「え?...........大丈夫って何がー」


言葉を返し掛けて、一瞬にして倒れる前の記憶が蘇る。

心臓は激しく脈打つのに、手足からは血の気が引いていく。


「覚えて無いのですか?」


「...........コルトーはっ?!コルトーは何処です?!コルトーを呼んでくださいっ!!」


困った様に顔を見合わせる二人を見ている内に、さっきの夢の情景が生々しく蘇って来る。


「呼んでくれないなら、自分で行ってきますっ!!トエト先生離して下さい!!」


「待ちなさいソル...........落ち着きなさい!」


「嫌です!!離してっ!!コルトーに会いに行きますっ!!」


「ソル...........」


「どうしてそんな顔するんです?!簡単な事でしょ?直ぐ近くに住んでるんだから!!大ケガをしてる筈だからっ!!」


起き上がろうと暴れる身体を、トエト先生が強い力で抱き締める。


「離してっ!!」


「.............コルトーは、レーテの丘に居ます。それでも行けますか?」