「いや、それがどうやらソルは違う様なのだ。私の前でも全く着飾ろうともしないし、二人きりでいても、私に擦り寄っても来ない」


「あぁ~なるほど!キルバル様は、欲求不満でしたか。最近預言書の事ばかりで、何処の娘の所にも通われなくなったから、お身体を持て余しておられたのですね?気がつかず大変申し訳御座いませんでした。早速今夜にでも手配させます。キルバル様が相手となれば、一夜限りの夜伽でも、申し出る者は山程おりますゆえ」


「そうではないっ!!」


不思議そうな顔をするアルツァが腹立たしくて、思わず声を荒らげてしまった。

手近にあったぶどう酒を一気に飲み干す。


「ソル様は神官でございます。いずれは神に返さねばなりません」


「だからなんだ...........聞くまでもない事だ」


「それならいいのですが...........まぁ、見習いの内に辞めれば問題はありませんが、ソル様には全くその気が無いようですから」


「お前に何が分かるんだっ!!」


「いえ、客観的に見て意見ですが、三ヶ月も経つゆうのに、未だにモノにされていないご様子。あの娘の頭の中は預言書の事だけかと...........。なので、もう脈が無いと判断致しました」


アルツァの言葉に思わず机を拳で叩いた。


「勝手に判断するなっ!!俺はまだ本気を出してなどいないっ!!」


「それは.......申し訳ございません」


杯を机の上に乱暴に置き、音を立てて勢い良く立ち上がると、キルバルは扉の方に向かって歩き出した。


「この様な時間にどちらに行かれるので?」


「私の寵妃の所だ。何か文句があるか?」


「いいえ」


「そのぶどう酒、今すぐあれの部屋にも届けさせろ」


「御意に」


アルツァは、わざと恭しく頭を下げてお辞儀をした。