ある日の夕餉。

金の細工のされた杯に、手際良くぶどう酒が注がれて、テーブルには豪華な料理が並んでいた。

それなのに一向に手を伸ばす気になれないのは、この間からずっと気分が優れないからだ。


「レルーガ神のお恵のお陰で、今年のぶどう酒は出来が良いとか...........キルバル様、如何ですか?」


「.....................」


「キルバル様?」


「ん?...........何だ?」


「どうされました.........何をお考えです?」


侍従のアルツァが不審な顔で視線を送って来る。


「アルツァ...私はどう見える?」


「はい?何がでございますか?」


「だから、男としてどう見える?」


「私がでございますか?」


アルツァは言葉の意味を計り兼ねた様に、少し間を置くと口を開いた。


「私にその様な趣味は御座いませんが?」


「ブッ!ゴフッ...........ゴホッゴホッ!!勘違いするな!!女から見てどう思うか聞いている!!」


「はぁ...女人からですか?それは言うまでもなくキルバル様ご自身が、一番ご存知なのではないですか?」


「あぁ...確かに分かっているつもりだったのだが、最近何故か疑問に思う様になってな...........」


「最近ですか?」


「女とは、少しでも身分の良い男や美しい男を好むであろう?結婚が全てで、その為に着飾り、媚を売り身体を許す。実に分かり易い生き物だと思っていたが...........」


「まぁ....大体はその通りかと」