俯いてベールをしている為、顔がはっきり見えない。

訝しげに見ていると、その女の後からベールを持ったステーシアが顔を出した。


「ステーシア、何をしていた?ソルはまだか?」


「何をおっしゃいますキルバル様?こちらがそのソル様でございます」


そう言うとステーシアはその女のベールをゆっくりと上げて、にっこりと笑った。


「オォォォ!!」


その瞬間、周りの男達は皆揃って歓声を上げた。

ベールの下から現れたその娘は、間違いなくあの神官見習いのソルだった。

黒い絹の様な髪は高く結い上げられて、肩に薄く落ちた疎らな髪の毛が、白く透き通る様な肌を際立たせている。

恥しそうに俯いたままの瞳は、長い睫毛が影を落として、何とも妖艶な雰囲気を醸し出していた。

微かに動くと、揺れて音を立てる金細工の飾りが、更に美しさに拍車をかけた。


「ソル……そなた、女人……なのか?」


「そ...そうですが……」


「しかし、神官とはー」


「女がなれぬ規則はございません!」


「如何にも、それはそうだが……しかし…」


何かにピンと来たのか、隣に控えていたアルツァが声を上げた。


「そなたがアルトエ以来の試験を通った、女の神官見習いか?」


「知っていたのか?アルツァ!!」


「はい、噂なら少し。この者とは思いませんでしたが…」


ソルは一歩踏み出すと、キルバルにしか聞こえぬよう、耳元に近づいた。


「キルバル殿下、先程の褒美の話ですが物ではなく何でも一つ願いを叶えてくれますか?」

何か気に障ったのか、先程とはガラリと違う真剣な眼差しがキルバルを射抜く。


「望みがあるのか?何だ?」


「私の望みは簡単な物ではありません。無事解読した暁に改めて..........」


「よし、わかった!契りは必ず守ろう!!」