ゆっくり扉が開いて、さっきの女性が
入って来た。

とわこさんと目が合うと、すでに
泣き出しそうな様子。

口をぎゅっと結んで耐えているのが…
俺から見ても痛々しい。


いらっしゃいませ。
待ってましたよ。と、ふわりと微笑む。

ご予約の方ですよね?
こちらへ、いらっしゃいな。
外は寒かった?

優しい声で、あっという間に包み込む。


見るからに、ホッとするような顔をして
その女性は、はい…。と小さな声で言った。


チビ。俺、毎回思うけどさ。

なに?

あれは…誰だ?


えー!とわこさんだよ?知らなかった?


…いや、もういい。
これ、3番テーブル。キリマンふたつね。


はーい。
ちゃんと入れ直したかな?


入れ直したよっ!
…もう、どいつもこいつも…。


俺は将来、自分のカフェを開きたい。
あちこちの店で、コーヒーを飲み歩いたけど。

ここのコーヒーは、他にない美味さで。
頼み込んで、働かせてもらってる。


小さい店だけど、客は多く。
美味しいコーヒーはもちろん…
とわこさんのおしゃべり付きのセットが
ここの人気メニューだ。

大体が、恋愛相談のようだけど…。
今日のお客様は、久々に大変そうだ。


こら、ヤス。
ヤスんでないで、働きなー。

へへ…うまい?うまい?



…チビ…。
それ以上…
俺に近寄らないほうがいいと思うな。


はーい。