枯れた蔦をぼんやり眺めて立ち尽くしていると、表の方から校長先生がやってきました。

校長先生は私を一瞥しただけで何も言わず、アーチの前にしゃがみこみました。

彼は長いことその場で手を合わせ、最後にアーチに絡む蔦の間に一輪の花を差し込むと、今度は私を見ることもなく去って行きました。

それはピンク色のバラの花でした。

私は自分の手の平を見つめました。

「魔物」に触れた時についた赤茶けた汚れは、いくら洗ってもなかなか消えず、手の皺の間にはまだその色が残っていました。

それは私の罪の色でした。

容子を見捨てた私の、夢みたいな出来事を大人たちに打ち明ける勇気がなかった私の、そして、校長先生を前にして何も問い質す事ができなかった私の......。

けれど今、罪悪感よりも強く私を打ちのめすものがありました。