けれど、頭の中のその光景からはどんどん現実味が失せていくのに、あの場所で感じた高揚感や恐怖だけは、どういうわけか体の芯にこびりついて薄れていってはくれないようでした。

いまだに震えの止まらない体を抱きながら、机の横に下げたピンクのランドセルに目を向けました。

闇にくすんだピンクのランドセル。

容子とおそろいの......。

容子を助けに行かなければ、と思うのに、私の体はもうけして動こうとはしませんでした。

今更行っても仕方がないでしょう、出入口はもう閉じてしまったのだから。

私まで魔物に捕まるわけにはいかないのだから......。

暗い部屋に朝日が射し込むまで、私は膝を抱えながら、気力の途切れてしまった自分を当化するようにずっとそう唱え続けていました。