「だって、教えてもらったんだもん」

容子はまた、昨日と同じ言葉を口にしました。

「誰に?」

夢見がちな容子にそんなことを吹き込むなんて、面倒なことをしてくれたものです。

名前を聞いたら幼なじみとして苦情を言いに行こうと考えていた私に、しかし容子は「言えないの」と首を振りました。

「誰に教えてもらったか、他人に教えちゃいけないの。約束を破ると、連れていってもらえなくなっちゃうんだよ」

「連れていってって、なに?」

「あのね、お迎えが来るんだって。お迎えが来た人だけが、夜の庭園に入ることができるの」

「なにそれ」

私は新たな話の展開にうんざりしましたが、容子はどこまでも真剣でした。

「一緒に行こうよ、エリちゃん」

「え?」

「私からその人のことは教えられないけど、私がその人に、エリちゃんのことも誘ってって頼むから。
そうしたら二人でお迎えを待って、一緒に夜の庭園に行けるよ」

ね?と容子は無邪気に笑いかけてきます。

私はその思わせぶりな話し方にイラついて顔をしかめました。