夜の庭園ー少女たちの消える庭ー

そんなことを考えながら遠くを眺めていた視線を、ふと地面に移した時です。

自分が歩いている道のほんの少し先に、何かが落ちていることに気付きました。

ぎょっとしながらも近づいてみると、それは蓋の開いたランドセルでした。

ただし、色は赤です。
容子のものではありません。

それでもそれは、この庭園に入ってから遠い容子の背中以外で初めて感じることのできた「人の気配」でした。

私はそこにしゃがみこむと、慎重に赤いランドセルを観察しました。

開いた蓋から、中身が雪崩のように外に飛び出してしまっています。

一番上にあった教科書を、表紙を見ようとひっくり返して、思わず心臓が鳴りました。


『4年生 算数』


私はその下からノートを見つけ出すと、名前が書いてある場所を探しました。

表紙の右下に記されたその名前は、行方不明になったまま今も見つかっていないあの4年生の女の子のものでした。