「容子、もう子供じゃないんだから、空想ばっかりしてちゃだめだって」

私はうんざりした気分で、何回目になるかわからないセリフを口にしました。

容子の空想好きは昔からで、私も少し前までは容子と一緒に空想に耽ってごっこ遊びをしたり、自分たちで創った物語をノートに書いて楽しんでいたものですがーーー

でも、私たちはもう最上級生、来年には中学生になるのです。

子供じみたお遊びは、そろそろお終いにしたいところです。


「空想じゃないよ。私、ちゃんと聞いたの」

容子は私の小言に一瞬傷付いた顔をしたあと、小さな声でそう言いました。

「何を聞いたの?」

私が尋ねると、容子は黙り込みました。

沈黙が落ちること数秒。

容子は夕闇の中で花咲くように微笑みました。


「いいよ。エリちゃんだって、きっと信じるんだから」