さすがの容子も、この状況で言うべきではないことくらいは分かるのだと思い、私は密かに胸を撫で下ろしました。

けれど、分別ある行動として沈黙を貫いているにしては、容子の沈黙は少々重すぎるように思えました。


私たちはあの校舎裏での出来事以来、いまだにろくに口を聞かないままでした。

容子は私を避けながらも他のクラスメイトとは普通に会話をしていて、私も他の子と仲良くしながら、気長に容子が機嫌を直すのを待っていました。

ところが最近の容子は、他の子とも口を聞かずに一日中俯いているようになったのです。
でも、それも仕方ないことだったかもしれません。

同じ小学校に通う女の子が突然姿を消したのです。

ショックと不安で情緒不安定になっている子はたくさんいて、下級生には学校に来れなくなる子までいるようでした。

私自身、校長先生にあんな話を聞いた直後だったこともあり、漠然とした不安になかなか寝つけない日々が続いていました。

私は寝不足でぼんやりしながら毎日容子の姿を眺めました。

思いつめたように俯く容子の白い横顔は、ひどく大人びていて綺麗でした。