4年生の女の子が行方不明になったのは、私が図書室で校長先生と話した三日後のことでした。

その子は一旦学校から自宅へ帰ったあとに「友達の家に行ってくる」と言って家を出て、それきり行方が掴めなくなってしまったそうです。

学年は違いますが、私はその子の顔も名前もよく覚えていました。

先月の学芸会の劇で、主役の赤ずきんを演じていた姿がとてもかわいらしく、印象に残っていたからです。


警察や有志の捜索隊の懸命な捜索にも関わらず、数日がたった今でも発見の知らせが届くことはありませんでした。

先生や父兄はピリピリと神経を尖らせ、子供たちは不安にざわめいて、校内には様々な憶測が飛び交いました。


彼女はどこへ行ってしまったのか?
無事でいるのか?
何が原因で姿を消したのか?ーーー


以外だったのは、教室のそこかしこから聞こえてくるそんな会話に、容子が参加するそぶりをまったく見せなかったことでした。

ここぞとばかりに少女の失踪と「夜の庭園」の関係をこじつけ、「あの子は庭園から迎えが来たからアーチの向こうへ行ってしまったんだ」などと言い出すのではないかと思っていたのに。