放課後、容子はさっさと一人で帰っていき、私は図書委員の当番をしに図書室へ向かいました。

訪れる人はほとんどなく、私ともう一人の当番の子はカウンターで暇を持て余しました。

やがてその子も「習い事があるから」と先に帰ってしまったので、私は誰もいない図書室の中を、本の背表紙を冷やかして歩くことで時間をつぶしました。

(『世界のバラ庭園』......)

ふとそんなタイトルの背表紙が目に入り、私はその本を棚から引き抜きました。

大判のその本は、世界中にあるバラの庭園の様々な景色を集めた写真集のようでした。

青々とした生垣に映える真紅のバラ、レトロな洋館に蔓の這う東屋。
手入れの行き届いた人口の庭のそこかしこに咲き乱れる色とりどりのバラの花......。

「庭園」というものをぼんやりとしたイメージでしか知らなった私は、なるほどこれがそうなのかとその美しい風景に見入りました。