「容子、またひとりで裏の花壇に行ったんでしょう」

夕暮れの帰り道、私はそう言って隣を歩く容子に怖い顔をしてみせました。

「なんで知ってるの?」

大きな目をさらに大きくして、容子が私を見上げてきます。

「立野先生に言われたの。エリさんからも注意してあげてって」

「エリちゃんに言うなんて、先生卑怯だなぁ」

秋の初めの夕方、空の向こうから澄んだ薄闇が漂う中を歩く私たちの背には、おそろいのピンク色のランドセルが揺れていました。

私はランドセルの色をくすませてくれる薄闇の帰り道が好きでした。

小学校に入学したばかりの頃は自慢でしかなかったかわいいピンクのランドセルは、6年生なり、だいぶ背も伸びた今の私には似合っていない自覚がありました。

今からでも地味な色に換えたい私とは逆に、容子は今でもこの可愛らしいランドセルが大のお気に入りで、中学にもしょっていけたらいいのに、などと零すほどでした。

中学にしょっていけるかはともかくとして、容子がピンクのランドセルを背負う姿は6年生になった今でも違和感がないものだったのは確かです。

もちろん私と同じように背も伸び、体つきも大人に近づきました。

けれど容子は私とは違い、ランドセルのかわいらしさに負けないくらいにかわいらしい少女でした。


柔らかく白い頬に、猫のようにくるりとした大きな目、小さな赤いくちびる。

少しだけ淡い色の髪が顔を縁どって、笑うとまるでピンクのバラが綻ぶようでした。

フリルやレースのついた服を着ている日は、まるでドールショップで売られている人形のようにも見えました。