ああ言う奴とは関わらない方がいいに決まってる。 幸いにもその青年は私が掛けた声には気づいていない。 私は声を掛けた事実をなかったことにして何食わぬ顔でグラウンドの脇を通り過ぎる。 内心バクバクと心臓がうるさかったけど、その青年は私が通り過ぎることにも気づかないで佇んだままだった。 私は完全にその青年を追い越した辺りで肩の力を抜くと後ろからカラスの鳴き声が聞こえた。 そのカラスの鳴き声は悲鳴にも似た大きなもので、私は思わず反射的に振り返っていた。 「あっ……」