そうやって、意図せず落とした視界に入り込んできたのは広いグラウンドに佇む一人の青年だった。 「ねえ!」 私は声を掛けてから後悔した。 なぜかと言うと、その青年の足元には真っ黒なカラスが居座っているのだ。 一体どれほどの時間を身動きせずにいれば警戒心の強い野生のカラスがあんなに近くに寄ってくるのだろう。 私には想像もつかない長い時間を、その青年はあの場所でただ佇んでいるのだろう。 だからこその後悔。