カクテル紅茶館の事件簿録


「だめね。大人になると色々なことを考えてしまって。

こんな歳でいまの仕事を離れていいのかなって。

そもそも私にそれが務まるのかなって。

後悔しないかなって。

私に会いに来てくれる子たちは大丈夫かしらって。

そんなふうに思ってしまったら抜け出せなくなっちゃって。

でも、次の日に学校へ行って考えが変わったの。

私が出会ってきた生徒たちは逞しかった。

朝はダルそうにしながらもしっかりした足取りで登校してた。

体育の授業が始まるとあの部屋まで届いてくる声に生命力を感じた。

休み時間になるとそこら中から笑い声が聞こえてきて、みんなはしっかりといまの瞬間を楽しんでるなって思った。

そりゃたまに私のところに休みに来る子や相談に来る子はいたのよ?

でもね、それは弱いとか逃げじゃないの。

きちんといまと向き合ってるからこそ悩んだり落ち込んだりするのよね」