カクテル紅茶館の事件簿録


織原先生はそこで言葉を切る。

それまで本当に嬉しそうに声を弾ませていた。

顔には見てるこっちが微笑ましくなるような満面の笑みを浮かべていた。

だけど一瞬にしてそれらは影を潜めている。

それまで真っ直ぐに絡み合っていた視線が外されて、いまは窓から遠くを見ている。

乗り出していた体を深く椅子に収めている。

早口になっていた言葉が、今度はゆったりと続けられた。

「私はすぐには返事を出来なかったの。

だって、ここには私と話すために何人かの生徒たちが来てくれるの。

大体は受験や学校のストレスをここでお喋りすることで発散させてる子が多いんだけどね?

でもここへ来ることで学校に来れてる子もいるの。

この場所があるから前を見れる子がいるの。

自分の夢とその子達を天秤にかけたら夢は諦めようと思ったわ。

だけどせっかくの先生のお誘いを断るにもなんて言っていいか分からなくてね、校長先生に相談してみたの。

ふふ。ここだけの話校長先生って話は長いけどとても素敵な方よね。

校長先生はね、私に行くようにって言ってくれたの。

生徒たちのことを考えてくれるのは有難いけど自分の夢を諦めてはダメだって諭してくれたの。

夢を追う姿こそ、生徒たちには何よりもの刺激になるんだって言ってくれたのよ」