カクテル紅茶館の事件簿録


「まあいい。

で、観察を終えてから俺は演奏の準備をした。

その間わずか数分。

目の前の奴らから視線を外したのは数分だったんだ。

俺が観察してる間、俺に興味を持つ奴は一人もいなかった。

奴らは誰もが自分のことで手一杯で俺に見向きもしてなかった。

なのに、たった数分視線を外しただけなのに。

再びその空間に視線を戻すと目の前に一枚の譜面が置いてあったんだ。

最初は誰かの落し物かと思ってさ、取り敢えず拾ってみたんだ。

そしたらその譜面には『あげる』の一言が書かれた付箋が貼ってあった。

つまりは意図的にここに置いたらしい。

俺は気になってすぐにその譜面を見た。

びっくりしたなぁ。

手書きなのはまだしもその曲は俺の知らないものだった。

けど、もしかしたら俺が知らないだけで既存のものなのかとも思って精通してる奴に見せてみた。

けどそいつもやっぱりそんな曲知らないって言うんだ。

どうしたことかと思った。

これが仮に誰かによって作られた曲なのだとしたらきっと思い入れは深いだろう。

それを誰からどんな意図で譲り受けたのかも分からないまま俺が演奏するわけにはいかない。

が、その曲は俺の音楽感をめちゃくちゃに刺激するものだった。

俺はどうしてもこの音を奏でたい。

その為には誰が何の為にこの譜面を置いてったのかがとても重要になる。

そんな風に悶々としてる時にこいつは現れた。

俺は助言を求めてもいなけりゃ何が起きたのかも話してないのに、こいつはそれを全て見透かしてるみたいに話しかけてきたんだ。

な?怪しいだろ?」