ガチャッ


私はリビングの扉を開く。


そこには、ソファーに座ってるふとんくんと、飲み物とお菓子を出しているお母さんがいた。


ふとんくんの服はというと、案の定お父さんの服。


「ですよね…」


服を着ていないという変な考えは叶うことなく消えていった。


それでも、お父さんの服のはずなのにふとんくんが着ているとオシャレに見える。


不思議だ。


「瑠梨、お菓子あるから食べなさい」

「あ、うん」


お母さんは私の分も用意してくれていたらしい。


近くに座り飲み物を口にする。


横目でふとんくんを見る。


透き通るような白い肌。


高い鼻筋


少しおっとりした目。


綺麗な唇。


ふわふわした髪の毛。


少しだけ長い前髪。


全てが完璧だ。


「素敵な家だね」


ふとんくんが私に話しかける。


なんて綺麗なアルトの声なんだろう。


高すぎず低すぎず、素敵な声だ。


「…瑠梨ちゃん…?」

「………はい?」

「そんなに僕の事見てどうしたの?なんかついてる?」

「へっ…、あっいえ!なんにも!」


ガン見していた。


変な子だと思われたに違いない。


「ほんと?瑠梨ちゃんから凄い見られてたから何かと思っちゃったよ」


クスクスと楽しそうに話すふとんくん。


「あはは…」


私は苦笑いで返す。


「でも、雨が降り始めた瞬間に傘持ってくるなんて凄いね?僕びっくりしちゃった」

「あ…それはなんというか…たまたま外見たら雨が降り出してきて、見覚えのある人が立ってたので…!」


ずっと見てました。なんて言えない。


「そうなんだ。ほんとにありがとう」

「いえいえ」


良心が痛む。


「そういえば、ずっとお客様って呼んでる。お名前か苗字、伺っても?」


お母さんがふとんくんに聞く。


「あ、僕の名前ですか?冬翔です。咲園冬翔」


咲園 冬翔(さきぞの ふゆと)


なんて素敵な名前なんだ。


冬翔くん…。


「冬翔くんね、素敵な名前じゃない。ね、瑠梨?」

「うん…素敵…」


私はお母さんからの問いかけにうっとりした様な表情で答える。


「そんなに褒められると照れちゃいますよ」


自分の名前が褒められて嬉しいのか照れているのか、少し顔がピンク色に染まっている。


可愛い。


「学生の頃のあだ名とかあったの?」


またもやお母さんがふとんくんに質問をする。


「学生の頃、僕の近くにいると眠くなりやすかったみたいで、布団みたいだなって言われたのがきっかけで卒業するまで布団って言われてました」


なんだと…?


そんな事が…。ふとんっていう名前はそこから来ているのか…?


生放送でも、学生時のあだ名。としか言わなかったふとんくんが…


お母さんの質問で明らかに…。


ちゃっかり本名まで聞いちゃってるし…


お母さんは偉大である。


「そうなのね」


そこまで聞くとお母さんは立ち上がった。


「教えてくれてありがとう。冬翔くん。それじゃ、瑠梨。お母さんはちょっと用事あるから、雨が止むまで冬翔くんと話してなさい」


そう言うとお母さんはニッコリと笑った。


「えっ…」


そしてそのままリビングから立ち去る。


嘘でしょ…。


ふとんくんと二人きり!?!?