「いえ。帰宅部です」


正しくは、1人きりの演劇部部員だが、1人きりゆえにほぼ活動はないようなものだった。

帰宅部と言ってもあながち間違いではないだろう。

「そうか」


遠いところを見つめるような様子で圭はつぶやいた。そして頭を下げた。

「夏休みの間、学校で河彩を撮らせて欲しいんだ」


「頼む」


突然の変わりように塁はあたふたとする。


「あ、ちょっと、頭を上げてください。私、何て言っていいか」


そもそもまだ何ををするのかわかっていないのに、返事のしようがない。

そう言い出そうとしたら、圭が説明を始めた。


「週一回、この教室で、自由にしてくれればいい。俺は勝手に河彩を撮る。撮った写真はフォトコンテストに応募する以外は使わない。不安なら全て終わった後消去してもいい。」


断ることはできない、そんな真剣なまなざしだった。