「卒業おめでとうございます、先輩」


「あぁ、ありがとう」


卒業式を終え、圭は塁と化学室に別れを告げに来ていた。


(二つの年の差って大きい)


塁は窓の外を見つめながらそんなことを考えていた。

きっと先輩は、大学に入って、色々な出会いがあって、私のことなんて高校時代のちょっとした思い出になってしまうんだろうな、と思う。

最後なのに、気の利いた言葉が何も言えない。

自分の気持ちを言いたい、言えない。言いたい。胸が苦しい。


「ぱしゃ」


カメラを構える格好をした圭が写真をとる真似をした。


「塁」


「はい」


「モデル、ありがとな。」


「はい」


「発声練習、続けろよ」


「はい」


はい、以外の言葉を発することができず、塁は泣いてしまいそうだった。