撮影のある日、塁は中庭に呼び出されていた。

放課後の教室に来たのは、圭と同じ色のネクタイをした男子生徒。

早く化学室へ行きたくて、気が進まなかったが、ノーを言わせない勢いのある誘いを断れるほどのコミュニケーションスキルは持ち合わせていなかった。


(私って流されやすいのかな)


モデルを引き受けたときのことを思い出す。

最初の印象は最悪だったけど、最愛の人になってしまった人のことを思い浮かべる。

自然と笑顔がこぼれる。

中庭につくと意を決したように、その男子生徒は話し出した。


「・・・・・・河彩さん!僕と付き合ってくれませんか」


(は?)


両手をきつくにぎられ、その力は強く、離そうとするができなかった。

そして、写真を見て感動しただの、涙が美しいだのと歯の浮くようなセリフを続ける。