「宇佐見先輩だよ。かっこいい!」

「この前も写真展に入賞してたよね」

 
どうやら塁が興味がないだけで、学校の有名人のようだ。


「河彩…」


もう一度名前を呼ばれそうになるのに気づき、あわてて手を挙げた。


「はい!はい、河彩塁、ここにいます」


クラスメイトの好奇の視線を感じながら、カバンを抱えて立ち上がった。

友人の方に視線をやると、ひらひらと手を振られた。

いってらっしゃいということだろう。


腕組みをして待っている宇佐見先輩(とやら)の方へ向かう。


「遅い!」


(何、この人!感じ悪い!初対面なのになんなの)


「ちょっとついてこい」


連れられて一緒に廊下を歩くと、左右から視線が集まるのがわかった。

いつも歩いている廊下がまるで違う世界のように感じる。



ありふれた日常が変わる、そんな予感がした。