「え……?」


カメラを脇に置き、何かまだ言葉を紡ごうとする圭に塁は戸惑った。


(俺様先輩じゃない。この人は、本当にやさしいんだ。)



(だめだ。好きになりそう。)



圭が近づき、抱きしめられるっと目を瞑った瞬間、頭に優しく手が置かれるのがわかった。



「よしよし。大丈夫だ」



塁は半泣き笑いになりながら、「何ですかそれ」と言葉を搾り出した。

本当は泣いてしまいたかった。

すがりたかった。

誰かに丸ごと私を受けとめてもらいたかった。

それが宇佐見先輩だったらいいのに、と思った。



塁が落ち着いたところで、次の撮影日の約束をし、この日は終了となった。