私達は逃げた。

初めて走った。
初めて邸を出た。

初めてなのに、背中に羽が生えたが如く、軽やかに走れた。

貴方が欲しい。
やっと、叶ったと思ったのに。

「桜の君様!」

家人が、追いかけてきた。

「はやく、お邸にお戻りください!姫様の御名に、傷がついてしまいます!」

「構わないわ!私は、この人と一緒にいたいの!!」

大声を出した。
人を怒鳴るのは、初めてかもしれない。