高校二年生になった。

6月。

先輩達は引退してしまって、
少し寂しい、美術室。

「はい、今日はこれをモチーフに…。」

美術部顧問の服部先生が説明を始める。

そんなことはどうでも良くて、
ひとつも先生の話は耳に入らない。


彼女の方を見ると、
真剣な顔で話を聞いていた。

「…っ!?」

ちらりとこちらを向くから、
驚いてすぐ目をそらした。

バレてないよな…?

バレないように、
チラチラと見ることしか出来ない。

それも部活でしか関わりもなく。
ほとんど話したこともない。

まあ、いいんだ。

見つめるだけでいいんだ。

それだけで幸せだし。
それで十分だ。

この気持ち、別に伝わらなくていい。