視界の端に、洋平がいたから。
言わなくてもいいウソをついた。
いい歳して、なにやってるんだか…。
盛大なお見送りを辞退して、
暗くなりきれない夜に…溶け込む。
こういう時は、一人だなぁって…
思ってしまう。
もう一杯飲んでこ。
今日は…やけに寂しい。
えっと、ここは…。
自分のいる場所を確かめようと、
周りを見て、気がついた。
ここの地下って…。
看板を探すと…
あった!
まだあったんだ…。
洋平と、付き合ってた頃
よく待ち合わせに使ったお店だった。
小さいカウンターだけのバーで。
穏やかで、聞き上手なマスターが素敵で。
懐かし…。
つい、足が向いた。
ドアを開けると、心地よいベルが
チリンとなった。
何人か客がいたけど、一人で座る分には
余裕だった。
座って、昔飲んでたカクテルを頼むと。
変わらないマスターの笑顔が見れた。
お客様、お久しぶりですね。
お元気でしたか?と、言われて、
胸が熱くなるのを感じた。
ポツリポツリと、マスターと話しながら
美味しいお酒を飲むうちに、
悲しかった気分が、穏やかになり。
そろそろ帰ろうかと、思っていた時に
入り口のドアがチリンと鳴り。
マスターが、微笑んで
お待ち合わせでしたか。と、言った。

