卒業式の一恋が脳裏の片隅にぼんやりと浮かんだ。
「はいはい、分かったよ!距離が近過ぎると幼馴染なのに勘違いされちゃうって事でしょっ」
艶っぽい唇が至近距離で弧を描く。
はいご名答、と一言添えて、わたしから顔を離した。
「まあ普通は自分の彼女が彼氏でもない男と帰ったりしてるの見たら、嫌だよね」
うーん、確かに……
そろそろ高校生だし、わたしも自立していかなきゃいけないのは分かる。
悠翔から離れなきゃいけないのは、寂しい。
それでも、一目惚れとはいえど絶対に今迄のような結果には終わらせたくない。
……少しでも氷室先輩にお近付きになれるように、頑張ってみようかな?
