次の日、さゆは集合時間前にすでに、
あたしの横にぴっとりとくっついていた。
さゆは、少しぽっちゃりだけど、
あたしに回した腕は、やわらかくて、
気持ちがいい。
甘い香りもする。
あたしを見上げて、もう行く?と、
聞く笑顔を見ると…
昨日の決心が、揺らいでしまうほど可愛い。
なかなか切り出せないまま…。
とりあえず、集合場所に向かうと、
ちょうどユウキも来たところだった。
あ。ユウキ!と、心が弾んだ次の瞬間…。
あたしの腕にぶら下がるような、さゆを見て、
ユウキは、わざとらしく驚いた顔を作って
言った。
あーれー?ハル。彼女出来たの?
なんだよ、先越されたなー。
え…?
心臓が…つかまれたように痛んだ。
ひ…ど。
や…だな。そんなわけ…
必死に笑おうとしてるのに、
どうしようもない涙が。
落ちてしまった…。
え?ハル?
ユウキの驚く顔が、どんどんにじむ。
だめだ。もう、誤魔化せない…。
ご…めん。
さゆの腕を、解いて
逃げ出すしか…出来なかった…。
回れ右して、走り出したあたしを、
さゆが、一生懸命呼んでいたけど…
あたしの涙は…止まるわけもなくて。
隠れてしまいたい…。
もう、ユウキの前から消えてしまいたい。
誰も…誰も、あたしを見ないで…。
走れるだけ走って…誰もいない教室に
入って、ドアを閉めた。
何度も携帯が震えていた…。
チラッと見ると…
案の定、さゆの名前が並んでいる。
出られないよ…さゆ。
ごめん…。
あたしは携帯の電源を切って…
一人で、声を押し殺し…泣いた。

