「なんか亮ちゃん、すげぇ男前になったな?」

 連れ立って家へと向かいながら、ナオが感心したように言う。

「おばちゃんに言いてぇ!」

「せっかくだからサプライズにしてあげようよ!」

「まあなっ」
 
 わたしと亮ちゃんが笑って吐いた嘘を。ナオは自分のことみたいに嬉しそうに。

 ・・・・・・ごめんねナオ。亮ちゃんは、もうここには来ない。最後にするつもりで吐いた嘘だって、わたしは分かる。
 
 亮ちゃんはまるで。初めからストーリーを用意していたように、グランド・グローバルのことも自分の立場も隠した。偶然会った、ってわたしの嘘に重ねて。

 おばさんやナオへの後ろめたさが、棘になり胸に刺さっていた。じくじくと血を滲ませて、心臓が脈打つたびに鈍い痛みを連れる。
 でもきっと亮ちゃんも同じ痛みを抱えてる。・・・そう思う。それよりもっと大きな何かを、亮ちゃんは背負ってる気がする。

 ・・・・・・暴きたいんじゃないの。ただ。持ちきれなくて零れそうになったら。小さいけど、わたしの手もここにあるって分かってて欲しいの・・・・・・。

「亮ちゃんがまだ独身だったら嫁にしてもらえ、明里」

 ナオが門を開けてくれながらニンマリ笑う。

「好きだったろ? 亮ちゃんのこと」

 ・・・・・・うん好き。これだけは間違いじゃない、後悔もしない。この痛みが罰だって言うなら。亮ちゃんの分も引き受ける。

「・・・じゃあ叶うよう祈ってて、ナオ?」

 満面の笑顔でナオを欺いても。・・・引き返したりしない。