気が付けばもう12月。年の瀬に向けて一息に加速していく感覚。年内に切りを付けたい案件が重なって、あっという間に月の前半が過ぎていく。
 
 亮ちゃんの仕事とわたしの仕事は、そもそも質が違うものだから。どこかでバッタリなんて偶然はゼロに近い確率だ。結局あれから一度も顔は見ていないし、ここまで来ると一生会える気がしない。

 あの夜を思い返して切なくなってしまうのはわたしだけで。亮ちゃんにとっては、妹愛の延長みたいなもの。・・・期待してしまわないよう、想いを膨らませてしまわないよう。
 きっと何も変わりはしないし・・・縮まることもないんだろう。宙に浮かんだきりの、わたしと亮ちゃんの距離は。



「手塚さん、忘年会出るでしょ?」

 三好さんが席を回って回覧していたのは、どうやら不動産事業部の忘年会参加希望の出欠だった。

「皆さんも出られるんですよね?」

「うんそう。新年会は社全体でやるんだけどねー。忘年会くらいだからさ、事業部だけの飲み会は。2時間ぐらいだし、飲んで食べてるうちに終わるから」

 サバサバと言って名簿のわたしの欄にさっさと丸を付け、隣りの席に移って声を掛けていく。
 
 事業部もいくつかの課があって、わたしがいるマネージメント課の他にマーケティング課とかコンサルティング課とか。
 マネージメントって響きは恰好がつきそうだけど平たく言えば総務、経理的な部署で。銀行や司法書士事務所との打ち合わせの段取りを組んだりだとか、計算書の作成なんかがわたしに任されるもっぱらの仕事だ。

 つまり。他の課の社員とはほぼほぼ面識がなく。人見知りの気がある自分としては到底、楽しめる要素がないけど、三好さんと初野さんにひっついて乗り切るしかない。
 ・・・よし。小さな覚悟を決めた。