一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~

「事情を話して休んで貰った。」

「買収したんですか?」

「協力してもらったまでだ。」

「じゃあ、他に誰に協力してもらってるんですか?」

協力、ってところをあえて強調して言う。

「木下店長と、出版社の2人だけだよ。あと、秘書の石川。」

石川さんは自分の名前が出ても、ちらりとも反応しない。
後ろで交わされる会話は聞かぬ存ぜぬなのだろう。

つまり、みんな知っていたんだ。
知っていて、私には何も言ってくれなくて。

見世物じゃないのに。

それに、豊沢社長は、
お金を費やして根回しすれば、何でも思い通りになると思っているのかな。

「気を悪くしたか?」

私に対する気遣いは時折見せてくれるものの、やっぱり色々と納得いかなくて悶々とする。

「人の心は、お金で買えるものではありません。」

社長には聞こえないような小声で言ったつもりだったけれど

「そうだな。」

聞こえてしまっていたようだ。