一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~

社長が最初から社長だった訳じゃない。
御曹司として生まれ、社会に出て行くのに、どれほどの重圧があったかなんて考えたこともなかった。

「いつも緊張している、って言ってたけど、私には最初に泣き顔を見られているせいか、虚勢を張る必要もなくなったでしょ。
気が楽だったみたい。
そして、仲良くなったことにつけこんだ私は社長に、雇ってってお願いしたの。
家政婦のつもりだったのよ、最初は。でも彼が用意したポストはプライベート秘書だった。
私は大学卒業してすぐ専業主婦になったから、社会人経験が全くなくて
本っ当に苦労したのよ。でもそのおかげで、考えなくて済んだ。」

夫と、子供たちのことを、と
石田さんが小声でつぶやいた。

「ねぇ、紗良さん社長の財産とか家柄とか気にしてるみたいだけど、
社長の中身はきっと、あなたが知ってる、元の社長のままだと思う。
ただ、10年以上かけて、徹底した跡継ぎとしての’豊沢 彬’をつくってきた彼にとってはもう、あの仮面は既に彼の一部になってる。そう簡単に変えられるものじゃないわ。
でもそれはあなたも同じよね。どうしてそんなに肩に力入れてるの?」

肩に力、と言われてもしっくりこないけれど。