一途な2人 ~強がり彼氏と強情彼女~

一夜明けて冷静になると、不安に襲われた。

私が意地を張って、社長を拒絶したことで
父の夢を潰してしまったのだろうか。

あの文学賞で大賞をとれば、作家としての父の立場は確固たるものになるだろう。
最終候補に残るだけでも、並大抵のことではないのに。

今から社長に謝るべきなのか。
でもそんな、お金や権力で賞を得たとして、父は喜ぶのだろうか。

どうするのが最善なのか、考えても考えても分からない。

今日が仕事だったら、没頭してる間は考えなくても済んだかもしれないのに、
予定もないとなると、本当に、他のことを考えることもできなくなる。


少しでも考えなくて済むように、取り合えず外に出てみることにした。
どこへ行くかも気にせずに駅に向かい、一番最初にやってきた電車に乗る。
ぼんやり外を眺めたり、駅で乗り降りする人々に目をやる。

皆、いろんな想いを抱えて生きてる。
解決しようにない問題に頭を悩ませているのは、私だけではない。

少し肩の荷が下りるのを感じた時に、隣の車両に、見覚えのある人を見つけた。

いつものスーツ姿ではないけれど、あのすらっとした姿勢の良さは間違いない。
石田さんだ。