「大河…、私ね、全然想像できないの」

「……」

「将来どころか、数か月後…、数日後さえ、どうやって生きたらいいのかわからない」

「…梨佳っ」

「人が、持って生まれた命の長さが寿命なら、私の寿命はとっくの昔に終わってる」

そう。

「今は、ただ…、最後の準備をするためだけの時間みたい…」


大河のように、
由紀のように、
自分は人生を生きてはいけない。


「ごめんなさい…」

「…ダメだ」

「ごめんなさい、大河…、一緒にいるのが、悲しい…」

「……」

「もぅ…、傍に、いられない」



お互いに、硬く握りしめた指先が、血の気を失っていく。

痺れてしまって、指一本すら動かせない。


「さようなら、大河」


必死に笑ってみせる。

涙が溢れる。

雨が降っていて、よかった。

そう思った。

涙が雨に洗われて、

泣いているのが、わからないから……