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ガチャ……
「何してるの?先生」
玄関のドアが開いたと思ったら、足元に先生が行き倒れてた。
「ゴホッ…、何しに…、ゴホゴホッ…!」
「…風邪?…もしかして、だから今日学校休んだの?」
「…ゴホ…~ゴホっ」
何か言いたげだけど、きっと“帰りなさい”とか言われるだけだし、無視しておこう。
「ほら、先生つかまって!布団まで戻るよ!おじゃましま~す!」
カーテンが引かれたままの薄暗い部屋に上がり込む。
テーブルの上にあるコンビニの袋の中には、水と風邪薬が封も開けられないまま入っていた。
「薬、飲まなきゃ…ダメじゃん、も~」
わたしは急いでコンビニ袋から水と薬を取り出すと、有無を言わさず先生に飲ませた。
先生は布団の中でうずくまって、ガタガタ震えている。
「どおしよ…なんか、毛布とかないのかな…」
上に掛けられそうなものを部屋中探してみるけれど、なんにもなくて…
わたしは、おそるおそる手を伸ばす。
そっと、布団の上から先生を抱きしめる。
――だって、まるで…
「…大丈夫、わたし、そばにいるよ?」
――…先生が一人ぼっちにみえたから…
眉間のしわ、
固く閉じられた目、
あ……
うっすらと、無精ひげ……
学校では見たことのない特別な先生の姿を見て、
自分まで特別な存在になったと勘違いしてしまった。
「きっと、もっと、しわが増えるね……先生」
先生は、聞いているのか、いないのか…
わたしは自惚れたまま言葉を紡ぐ。
「……どんどん歳を取って、中年太りでお腹も出てきて…、白髪なんかも増えて…」
「いつか老眼鏡なんか、かけたりしちゃってさ、あはは……」
ゆっくりと、沈み込むように、先生に体重を預ける。
ほんの少しだけ、力を込めて抱きしめる。
「……どんどん変わっていくんだわ、でもね…先生、でも…わたしは」
「…わたしはずっと変わらず、先生の事が好きよ……」
ギュウ…
悲しい過去も、つらい現実も、消えてなくなりはしないけれど、
先生のとなりで見る世界は、いつもとても優しいから…
全部、全部、愛しいと、あなたごと抱きしめる。
「先生……」
だって、こんなにも…
あなたを、こんなにも愛している…
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